ヒラメ視点
【ヒラメにスポットライトを当てよう】
「やめやめ!!バカ野郎!お前だけテンポがずれてんだよ!」
「すみません…」
「他のやつらの邪魔になってんだよ!もうお前いいから隅にどいて一人で練習してろ!」
「すみません…」
もうすぐ、ここ竜宮城に、乙姫様が寵愛していたカメを救った人間が招かれて来ます。
最上級のおもてなしでお迎えしなさいという、乙姫様の大号令のもと、急遽タイやヒラメは歓迎の舞を披露することになりました。
しかし、リズム感に乏しいヒラメは、どうしても周りの足を引っ張ってしまいます。
「はぁ…ボクはどうしてこう落ちこぼれなんだろう…」
すっかり落ち込んでしまったヒラメのもとに、"海中のマイケルジャクソン"の異名を持つ超一流ダンサー、タイがやってきました。
「そんなに落ち込むな、ヒラメ」
「でもボク、みんなに迷惑かけてばっかりで…」
「大丈夫、オレも最初はそうだった。いいか、ダンスはチームワークなんだよ。お前一人で踊ってるんじゃない。ミスはみんなでカバーしてやるから、思い切ってやれ!」
「タイさん…」
「まったく…。オレの後ろで踊れることを誇りに思えよ。さあ、練習あるのみだ!」
「はい!ボク、頑張ります!」
それから猛特訓したヒラメは、周りのみんなもびっくりするほど、ぐんぐん上達しました。
そしてついに本番当日。
「今日はチームのみんなのために、タイさんのために踊るんだ!ここまで頑張ってきたボクならできる!!」
いよいよ、舞台の幕が開きます。
「ハハハ!マジで!?それ地上にはないわー。竜宮城あるあるじゃないの?それ。あ、酒おかわりね!」
幕の向こうには、乙姫様をはべらせて、すでにいい感じにできあがった人間がいました。
人間はごちそうと乙姫様に夢中で、ヒラメには見向きもしてくれません。
それどころか、あんなに大口を叩いていたタイのダンスもちっとも見ていません。
ヒラメは、しょせん自分達の扱いはこんなものか。と思いました。