おばあさんが気を利かせたのが裏目に

桃太郎は、おばあさんに作ってもらったアンチョビを持って鬼ヶ島に向かいました。




旅の途中で、イヌに出会いました。


「桃太郎さん、どこに行くのですか?」
「鬼ヶ島へ鬼退治に行くんだ」
「それでは、きび団子を1ついただければ、お供… あれ?それ、きび団子ですか?」
「いや、これはアンチョビだよ」
「アンチョビってなんですか?」
イワシの塩漬けのことだよ。これでもいいかな?」
「すみません…。それじゃちょっと仲間になれないです」
「そっか…」
「すみませんね」
「いや、いいんだ。じゃあね」




そして、こんどはサルに出会いました。


「桃太郎さん、どこへ行くのですか?」
「鬼ヶ島へ鬼退治に行くんだ」
「それでは、きび団子を1ついただければ…」
「あ、うん…。実はアンチョビしかもってないんだ」
「それは無理す」




さらにしばらく歩いていくと、また向こうから何かが近づいてきました。


「桃太郎さん、どこへ行くのですか?」
「鬼ヶ島へ鬼退治に行くんだ。お供がほしいんだけど、アンチョビしか持ってなくて…」
「アンチョビですか!それは結構ですな!よろしい、私がお供になりましょう」
「ありがとう。でも、君はキジじゃないよね」
「いやいや、申し遅れました。私はこういうものです」
「増田物産の増田さん…?」
「はい。実は、愛知のほうで流通業をやっておりましてね」
「そうなんですか…。でも社長さんに手伝っていただくわけにはいかないですよ」
「困ったときはお互い様ですよ!」
「ありがとうございます。では、お気持ちだけありがたくいただいておきます。本当に困ったときは声を掛けさせてもらいますから」
「そうですか、残念ですなぁ。でも、必要なときは必ず声を掛けてくださいね!」
「はい。増田さんもお元気で」








(家族もいるだろうし、増田さんは連れていけないよなぁ…)


桃太郎は社長からもらった名刺をそっと握りつぶして捨てました。






桃太郎の旅は、まだまだ続きそうです。