持っていません

社長の息子は携帯を持っていません。
確かに、考えてみれば電話を携帯する必要がないのです。
会社に必要な対外的なことは先輩や社長がやるし、本当に友達がいないし。本当に。


そんな彼も、俺が入社する2年前くらいに試しに買ったことがあったらしいのです。
購入して以来、ずーっと着信がないまま電話がその機能を持て余してはや1ヶ月半。




突然、
プルルルル!プルルルル!



「お!鳴ったじゃん!出てみなよ」
という番頭さんの言葉に背中を押され、おそるおそる通話ボタンを押すご子息。


ピッ


「もしもし・・・。はい、・・・いえ、はい。・・・はい、すみませーん」


ピッ




「誰から?誰から!?」


「…間違い電話だった」











それ以来息子は心を閉ざしてしまいましたとさ。